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トライアスロンって何だ?

山スキーに関連するものではありませんが、山岳部ではぶざまな自分と、理想とする根性・ガンバリとの乖離・脅迫観念に苦しんだことがあるのです。
それがマラソン、トライアスロンで解決されたという報告です
報 告 者 佐藤文昭

トライアスロンはなにか特別なもの、

つらい過酷なスポーツだと思われているようです


そうじゃないんだということをこれからお話します 


マイナーなゲテ物スポーツであったトライアスロンが一躍世間の注目を浴びるようになったのは、
1982年アイアンマン・ハワイがABCテレビによって全米に放映されてからでした。
女子のトップを走っていたジュリー・モスがゴール前で失速し、何度も転倒してしまいます。
しかし、ゴールしたいという執念でその都度立ち上がる姿が人々に感動をあたえました。
その後、トライアスロンは急速に広がり、世界中で行われるようになったのです。
この動画によってトライアスロンは「つらい過酷なスポーツ」という印象を世間に与えてしまったのです。
これは、営利団体である主催者にとっても、テレビ局にとっても都合のよいことでありました。
1位で走っていたジュリー・モスは、迫る2位の選手に抜かれまいとオーバーペースになってしまったのです。
単なるペース配分の失敗だったのです。
2位のカトリーヌ・マッカーシーはモスが倒れているのに気づかずに追い抜いて、ゴールで1位優勝と聞かされ、
元気に飛び上がって喜んでいます。
彼女は持続可能なスピードを保ったので元気にゴールできました


 東京オリンピックで5位入賞、メキシコオリンピックで2位になった君原選手は苦しそうに口を開け首を振りながら走っていました。

 当時、私は大学を卒業したころで、山岳部ではわずか5kmを苦しんで走るのがトレーニングでしたから、5kmでも苦しいのに42kmをあの苦痛を我慢しながら走り続けるのはスゴイなと見ていました。

 持久走を始めてやったのは、麹町中学の皇居1周5kmの全校マラソン大会でした。
 数日前にクラスの友達数人と試しに皇居を1周してみました。走り始めてすぐに息苦しくなってしまい、歩くことになりました。5km続けて走ることができませんでした


 高校の山岳部では、トレーニングで皇居1周5kmをハアハア・ゼイゼイと苦しんで走っていました。

 トレーニングを続けてなんとか苦しいながらも5kmを走りきることができるようになり、高校で全校マラソン大会で20位となり、上位20位までが校内に掲示されて、自分の名前が入ったことがうれしかったです。 

 それは成功体験でもありましたが、
 その後は「どんなに苦しくても我慢する」という
根性と頑張りの美意識に囚われることになったわけです。


 高校山岳部のトレーニングでは「終わったとき失神するぐらい頑張れ」と言われていました。山登りではどんなに苦しくても遅れずに歩くことが求められました。

 しかし、苦しくなればそれ以上の頑張りを続けることはできませんでした。
 頑張り切れなかったことは、自分の弱さだと思い、自分自身を責めることになりました。

 大学山岳部では山行が終わると、反省会が開かれ、遅れた者が叱責されました。
 「なぜ頑張らなかったのか? 真面目にやってんのか?。良心的ではない。根性ねえのか?」。等々
 そのように叱責されても、おれは頑張ったと反論するものはいませんでした。

 頑張れなかったのは自分の弱みで決意を裏切ったからだと自責の念が胸がいっぱいになりうつむくしかありませんでした。

 同期の1人が苦しくて遅れてしまうので、上級生に殴ってくれと頼んでいました。殴ってもらえれば頑張れるかもしれないという期待があったのです。

 結局、何人かの仲間は自己否定の感情から、山岳部を退部することになりました


 ある本*に、苦しくないリズムで走りつづけると、脳内に特殊なホルモンが分泌され、ランニングハイという特殊な心理状態になると書かれていました。ハイの状態になると気持ちが良くて永遠に走りつづけられるような気分になるとも書いてありました。
   *久保田競(京大霊長類研究所)氏の著作ですが、タイトルは忘れました。Amazonでも検索できません。
 これは面白い、苦しいだけのランニングをトレーニングでやってたものですから、もうやりたくないという気分でしたが、別の世界が広がる期待で再び始めることにしました


 ジョッギングを楽に続けていると、体育会山岳部時代の5kmが限度の苦しいランニングと違って、10km20kmと距離が伸びていきました。

 そしてすぐにフルマラソン
42.195kmを完走できてしまったのです。


 ここで私の価値観は大きく変わったというか広がったというのか、つまり自己肯定の気持ちが大きくなりましたね

 根性もがんばりもなくたって良いんだと気づいたのです

 苦しくなければトレーニングにならない。苦しいトレーニングで根性を鍛えるなんてのは古い考えです。

 練習もやればやるだけ良い、あるいは苦しい練習ほど効くというものでもありません。


 困難辛苦を耐え忍んで強くなるというのは
ロマンティックな妄想です

 根性や精神力はなんの力にもならないのです。

 それどころか、勝手に思い込んだ空想的ロマンティックな概念である根性や精神力と現実の自分との乖離に苦しむことになるのです


 スポーツに於いては、持続可能なスピードというのが競技者のそれぞれにあります。それを超えたスピードを出すと、たちまちエネルギーの急速な消耗、疲労物質の蓄積をおこして、失速してしまうのです。

 山登りであえぎながら重荷を背負って歩いていて、前の人から数歩遅れることがあります。遅れることは恥でもありましたから、さらに頑張って追いつこうとしますが、その前の歩きがすでに持続可能なスピードを超えていたのですから、たまりません、さらに遅れることになります。 

 上級生が「バカヤロー!モタモタするな」と怒鳴ってもどうにもなりません。 
 野蛮な大学では蹴飛ばしたり殴ったりすることがありまして、死者が出てニュースになりました。 

 すでに限界ぎりぎりで頑張っているのですから、それをなるべく長く続けさせるように、ゆっくりのペースで完歩させてあげ、テント場についたらご苦労さんと慰労すべきなのです。 

 フルマラソンを
2時間10分で走る選手は、2時間5分のペースでついていくことはできません。
 それを根性と頑張りで追いつけと責めるのは無理な話です


 トレーニングはその持続可能なスピードをいかに高めるか、レース中は持続可能なスピードから外れないようなペース配分を心がけることになります。それがスポーツの醍醐味です。 

 それを教えるのがスポーツ・クラブ、運動部のやるべきことでしょう。

 最近では心拍数を表示する腕時計型の機器、それに自転車には出力をワットで表示してくれる機器もあり、広く普及しています。それらを見ながら最適な持続可能なスピードを冷静にコントロールします。

 今年の東京マラソンには
3万人ものランナーが参加しました。
 参加の皆さんは普通のニイちゃん、ネエちゃん、オバさん、オジさんです。
 計画的に苦しくないトレーニングを重ねればほとんどの方が完走できるのです。
 トライアスロンも同じです。
 個人でできる耐久スポーツは生涯スポーツです。

 今年のアイアンマン世界選手権には83歳の稲田さんが出場します。
 私も稲田さんの歳までやりたいと願っています


以上が話の全てです。

ここからは余興です

1984年44歳でアイアンマン・ハワイに出場
あのジュリー・モスの苦闘があった2年後でした

スウェーデン・カルマル市のローカル新聞に最年長の参加者として紹介される
You don't need to be strong, just persistent. I always compare it to a economy car race -
- you need to have gas all the way to the finish line

翌日の表彰式、70歳台参加者1人で完走したから1位

そして出場したアイアンマン・トライアスロン世界選手権ハワイ大会
スイムのゴール地点手前

バイク 最初の頃、余裕の表情だが、このぐらいじゃないと最後まで持たない

早い選手はすでにゴールしているのに、
これからフルマラソン 先は長い

ようやくたどり着いた真夜中のゴール それでも応援の人が沢山いて声援してくれていた

ヤッター やれやれ

バイクを受け取り 宿へ帰る 首にレイと完走メダル


翌年2013年はタイムオーバーでヨレヨレのゴール
記録には残らないが完走メダルをいただいた
動画をとっていた伊谷さんが「サトー君!」と叫んでいます

先にゴールしたネエチャンとツーショット 
後で彼女が女子チャンピオンのミリンダ・カーフレー嬢と知った.

左から80歳稲田、72歳佐藤、70歳小川 2012年当時

2014年のオーストラリア・ケアンズ 70--74歳クラスの入賞者
2位だったが1位が辞退したのでハワイ出場権を得る
3位の関谷さんは2015年春に亡くなりました。昭和15年生まれの同じ歳でした。

2015年のケアンズのスイム会場 [ヒョッコリひょうたん島]の前で

クリックするとGoogleEarthで見ることができます

今年2016は海が荒れていた スタートから時間が経つにつれひどくなって
1時間40分で全員に浜に上がるように指示が出た。
47歳の日本人男性が溺れて救助された
しかし、集中治療室で手当てを受けていたが死亡したと新聞で報じられた Cairns Post


日本の五島列島で行われたトライアスロンでも溺れた方がいた。同じく47歳 毎日新聞
トライアスロンの死亡事故はなぜか水泳で起こる
この日、五島の海は穏やかであったのだが

アイアンマン・ハワイの紹介ビデオ

「尋常ならざることを成し遂げるには尋常ならざる夢が必要だ」
(To accomplish something extraordinary
One must have an extraordinary dream)

なにを寝ぼけたことを言っているのか!!
私はそうではないからやっている 80歳までやろうと思っているのだ
営利企業体であるアイアンマン本部はそう宣伝し人気を上げる必要があるのだろう

フルマラソン完走はほとんどの人に可能だが、
オリンピックで金メダルをとるのは尋常なことではない

アイアンマン完走は日常生活の中で可能だ
異常なことではない、フルマラソンと同程度のことなのだ


1982年のジュリー・モスの姿も出てくる、
2013年にも出場し元気に完走している(1分56秒から)

 スキーは私の第一の趣味だが
アイアンマン完走が危くなってきたのでスキー・シーズン途中、
それも最盛期でスキーを離れて、トライアスロン・トレーニングするようになってしまった