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利尻山 強風と戦った3日間

  開催日 2022年4月21日〜25日
参加者 7名(会員1名,会員外6名)
報告者 平野裕也
報告日 2022/04/30

 これまで2度チャンスを逃して実現しなかった利尻山。3度目の正直と意気込んで出発したが出だしから稚内行きの便の欠航に遇ったり、立っていられないような強風に阻まれたりして1721mの山頂はおろか1000mにも到達できなかった。しかし利尻の気候の厳しさや、荒れた海の白波から煙のように発生する波しぶきなど得難い体験もでき、それなりに思い出い旅となった。

利尻島 国土地理院地図

4月21日(木)
 羽田に着くと同行者が手持ち無沙汰に座っている。どうしたのかと聞くと稚内便は強風で欠航とのこと、協議の結果旭川便に変更、慌ただしく手続きをして旭川へ。旭川からレンタカーを使って稚内に夕方到着。駅近くのビジネスホテルでの一泊となった。以前ポロヌプリスキー登山の折に訪れたことのある稚内でロシア語の看板にびっくりしたが依然として残っており、ウクライナ侵攻を思い起こし微妙な感覚に襲われる。入山の前祝とともに明日のフェリーの無事な出航を祈って街中の飲み屋で乾杯。

4月22日(金)
 フェリー乗り場に行くと定刻の出発とのことで一安心。1時間40分の船旅で鴛泊港に着く。海面から屹立する利尻山が見え感動。ペンションから迎えの車でペンション レラ・モシリへ。中々瀟洒なペンションでガイドを兼ねた50代の主人とてっきり娘さんと思った20代の奥さんに迎えられる。レラ・モシリとは風の大地の意と聞く。この後3日間まさにその名にふさわしい島であることを実感した。名物の昆布入り焼き塩ラーメンで昼食後、このペンションが経営するレンタカーを借りて長官山の入山地点や豊漁沢ルートの入り口を確認のため島内を一周する。

(1) 利尻山が近づく

(2) ペンション レラモシリ (3) 豊漁沢ルート偵察

4月23日(土)/長官山ルート
 朝からの小雨と強風で逡巡したが、意を決して長官山ルートの行けるところまでと決めて出発。10時に昨日確認した入山地点から樹林に分け入り、登山道に並行する西側の緩やかな沢を進む。途中から雨が雪に変わる。600m付近で二股の分岐に到着。沢の中なので強風は上空を拭き渡って通り過ぎてゆく。この分岐を左に入る。詰めてゆくと徐々に急な斜面になったところで右側の小尾根に逃げるが深いブッシュに阻まれ、午後1時を過ぎたので850m地点で行動を中止とする。
 クトー、シールを外して滑降に入る。程よい傾斜の疎林の中を滑り3時前に入山地点に戻る。二股右側の入り口が狭かったため見逃してしまったが右に入ればやがて長官山に続く広大な斜面に出られることはあとで分かった。ペンションに戻る頃から晴れ間が見え、温泉に入りようやく顔を現わし始めた利尻山の山頂を堪能する。TVで知床の観光船沈没事故を知る。

(4) 長官山ルート入り口 (5) 長官山ルート600m地点

(6) やっと山頂が見えた (7) ペンションの温泉からポン山越しに
山頂が見えるのだが・・

4/23 長官山ルート 国土地理院地図
4/23 登行図

4月24日(日)/豊漁沢ルート
 青空だが相変わらず強風が吹き荒れ、上空にはお団子のような不気味な形の雲の固まりが浮かんでいる。豊漁沢ルートを目指して8:30オチウシナイ川300m地点の除雪終点から入山する。針葉樹林の梢をゴーゴーと風が吹き渡っている。小さな沢を2,3本越してトラバース気味に西に進み400m地点で豊漁沢に入る。振り返ると海が見えるが、海の緑と白い波頭があたかも規則正しく整備された街並みのように見える不思議な光景だ。
 11時前に650m付近でゴルジュとなっているノドに行き着く。上部はガスにけむり、雨の帯が時折風に流れている。ゴルジュを越えればまた広い斜面になるのだがゴルジュ入り口付近には大きな落石も見られるのでここで行動を中止し、下山開始、お昼頃に入山点に着く。

(08) 奇妙な雲、強風の産物? (09) 豊漁沢ルートに入る

(10) 豊漁沢のノド650m地点

4/24 豊漁沢ルート 国土地理院地図
4/24 登行図

4月25日(月)
 今日は朝から風も凪ぎ、昨日までが嘘のような快晴だが帰京の日だ。フェリーに乗り甲板からくっきりと浮かぶ利尻山に「今度来るときには機嫌よく迎えてね」とさよならをする。

(11) 帰りの船からはすっきり山頂が見えた